紀行記
下北,津軽紀行
竹内 繁喜
1
1都立築地産院
pp.46-51
発行日 1961年2月1日
Published Date 1961/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202077
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◇1.野辺地—尻屋—田名部◇
7月31日(日曜).午前5時3分下り急行「北上」は朝もやがまだ晴れきつていない野辺地駅にはいつた.ここで大湊線に乗り換えである.毎日新聞の日曜版にかつて紹介されたローカル線で,2輛連結のディーゼルカーが待つている.目だけ出して,顔をすつぽりかくすように白い布をかぶり,背負い籠をかついだ女が沢山乗り込んでくる.下北半島の方から海産物を青森,野辺地あたりまで売出しにでかけ,米などを買つて帰えるのだという.
5時45分発汽車は単調な陸奥湾沿いに北上する.海はいたつて静か.すぐ車窓の左よりに夏泊半島が突き出し,前方に下北半島恐山がずつと付きまとう.駅と駅との間隔が非常に遠く有戸,吹越間は14.6kmもあり,赤字を思わせるように無人停車場が多い.線路に沿つて防雪林があるのも北国特有だ.7時大湊着,汽車はそのまま大畑線となる.停車時間を利用して駅前に出て見たが,すぐ背後に恐山が見渡される田舎町で,かつて繁昌した軍港の面影は全くない.もつとも,賑やかな街は旧軍港の方に離れているとはいう.7時9分大湊を出た汽車は再び下北駅を廻つて24分田名部着.
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