緊急レポート・2
雨のあとの下痢で,次々と人が死んでいく—エチオピアの干ばつ地帯での医療・看護活動
工藤 芙美子
1
1Japan international Volunteer Center
pp.322-328
発行日 1986年3月1日
Published Date 1986/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921358
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
雨期には雨期の脅威が
雨が降った.今年(1985年)4月1日の大雨以来,6月を除いては9月中旬まで降り続いた.Dessie(デシー)への道のりは緑が広がり,白,黄,紫の小さな花が大地を美しく覆った.ほこりのないさわやかな朝.しかし夜中に降った雨で長靴なしでは歩きにくくなった.靴の底に泥が重なり高ゲタをはいているようだ.病棟の入口に麻袋を敷く.靴の泥をコンクリートにこすりつけるスタッフたち,素足の泥をこすりとる人々で病棟はいつも泥だらけ.待ち望んでいた雨もやっかいなものだった.病棟の敷地に石を敷き通路を作ったスタッフに,長靴が支給された.
8月の雨量255.5mm,7月230mm.雨で川に水が戻り一面を緑と化した.羊,馬,やぎ,牛などが草を求めて出て来る.耕作も始まった.荒地に種を投げまき,その後,牛を使って耕すだけの簡単な作業ではあるが,みるみるうちに,麦や豆の芽が出て新緑の春のような景色に変わった.しかし人々はこの雨期を冬と呼ぶ.最低気温2℃.凍えるように寒い日もあった.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.