ワードスキャン
発癌物質
根本 信雄
1
1癌研究会癌研究所
pp.24
発行日 1986年1月1日
Published Date 1986/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921290
- 有料閲覧
- 文献概要
ヒト癌の発生に化学物質が関係しているとの報告は,1775年の煙突掃除夫の陰嚢癌が最初であった.しかし実験的に動物に癌を発生させることに成功したのは,それから1世紀以上も経過した1914年で,山極・市川が石炭タールを繰り返しウサギの耳に塗布して発生させた皮膚癌である.その後,英国のグループがタール中から発癌性の芳香族炭化水素類を次々に発見していった.それらの発癌性の検定には,筒井が開発したマウスの背部皮膚に塗布する方法が使われていた.
さらに現在動物を使っての発癌性確認試験の原法となっている,餌に検定試料を混ぜて長期間与える方法は,1935年佐々木・吉田がアゾ化合物をラットに応用し,内臓器として肝臓に初めて癌を形成させた実験に基づいている.このように,発癌研究の萌芽期に我が国の研究者が大いに貢献した.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.