老人たちのいる風景・10
拘束ということ
M
1
1老人看護を考える会
pp.1198
発行日 1983年10月1日
Published Date 1983/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919982
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脳血栓の疑いで入院した老人に付き添っていた私に,看護婦さんが最初に言った言葉‘あまり動くようでしたら“拘束”させていただきます’私は驚いてしまいました.看護婦さんたちは,日常よく使っている言葉であり処置でしょうが,事務的な冷たい口調に聞こえました.血管が細く手足を動かすと,すぐ点滴が漏れてしまう.だから“拘束”するのではなく,点滴漏れしない方法があるのではないでしょうか.
しかし結果的に私は一晩中病人を“拘束”していたのです.包帯で手足をベッドに縛りつける方法ではなく,起き上がろうとする病人の肩を押さえ,寝かせるという方法で.点滴が漏れてしまう.酸素がはずれてしまう.起きたらだめ!という気持ちが私の中にも働いていました.時間がたつにつれ,病人が起き上がろうとする意味がわかってきました.痰がからまり若しいとき,おしっこがしたいとき,おむつが漏れたとき,トイレに行こうと動きだすのです.痰を取ってやったり,おしっこをシビンで取ってやったり,おむつを替えてやると,意外に落ち着きました.
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