老人たちのいる風景・8
格子なき牢獄
A
1
1老人看護を考える会
pp.958
発行日 1983年8月1日
Published Date 1983/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919928
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‘吸いのみに水をいっぱい入れといてくださいね’と口ぐせのように言うおばあさんは79歳.先日都内のある老人病院から転院してきた.心拍数が30-43の徐脈で,時時頭がボーッとしたり,手足や口がしびれてきて,A-Vブロックと診断され,ペースメーカー挿入の日的で,当院(養育院付属病院)に紹介されて来た.両膝と腰の痛みがあり,寝たきり状態であった.どうして水にこだわるのだろうかと思って,いろいろ話してみた.
老人病院に入院したのが1980年10月で,約2年半の入院生活であった.初めはどうにか歩けていたが,足腰が弱くなり,ポータブルトイレを使用していたが,そのうちベッドから降りられなくなり,寝たきりとなった.すぐにオムツが当てられた.尿意ははっきりしていたが1日5回の定期の交換以外は,その部屋のヘルパーさんがやっていた.夜7時から朝6時までの11時間は,ぐしょぐしょに濡れたオムツの上で眠るしかなかった.そして,オムツ代として1日1OOO円,洗濯代,300円,交換代500円と請求され,月々5万4OOO円支払っていた.
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