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はじめに
2003年に施行された「健康増進法」および,同年に厚生労働省から発出された「職場における喫煙対策のための新ガイドライン」によって公共的な空間と職場の禁煙化が進められてきた1).さらに,2010年に施行された「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」2)によって民間の飲食店についても従業員の健康を保護するために受動喫煙対策が必要であることの認識が広まってきている.
屋内を法律・条例で禁煙化する第一の目的は非喫煙者を受動喫煙から保護するためであるが,非喫煙者が居る場所(特に閉鎖空間)では喫煙するべきではない,という社会風潮が醸成される副次的な効果も発生する.2003年に施行された健康増進法によって公共的な施設や多くの職場が禁煙化されたことでたばこの非正規化(de-normalization)が進み,その結果,「喫煙をやめる=禁煙する人」を増やすことにもつながってきた.
しかし,健康増進法による禁煙化は努力義務であったため,民間,特に飲食店の禁煙化はほとんど進まなかった.ところが,2020年に予定されている東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて,世界保健機関(World Health Organization:WHO)と国際オリンピック協会からの「たばこのない五輪大会」の要請がきっかけとなって成立した「健康増進法の一部を改正する法律」(平成30年法律第78号.以下,改正健康増進法)が施行された.さらに,「東京都受動喫煙防止条例」3)(以下,都条例),「千葉市受動喫煙の防止に関する条例」4)(以下,千葉市条例)の施行が続き,民間の飲食店などの禁煙化が大幅に強化される見通しがついた.しかし,上記の法律と条例では加熱式たばこの専用室を設置すれば飲食をしながらの使用を認められたことが物議を醸している.
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