特集 クリティカル・ケア
クリティカル・ケアにおけるLIAISON PSYCHIATRY —ICUノイローゼとそのケアについて
清水 洋一
1
1日本医科大学精神医学教室
pp.1362-1366
発行日 1981年12月1日
Published Date 1981/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919414
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
近年,わが国においては,救急医療体制の充実は社会的な要請であり,その一環として,各地の医療機関ではICUやCCUという集中治療部門を設置するようになってきた.そして,この集中治療部門には各種の優れた治療機器が備えられ,緊急事態に対応できる専属の医師と訓練された看護婦が勤務して万全の態勢で患者に臨んでいる。そこでは,治療・看護スタッフの目は患者の身体状態の上に絶えず注がれ,さらにモニターのわずかな変動も見逃さない緊張した状況が支配している.しかしながら,患者のほとんどが集中治療部門への収容は初めての経験であり,見慣れない複雑な治療機器に囲まれて当惑すると同時に,生命の危機にさらされている自分の現実の姿に,極度の不安を覚えているのである.しかも,絶対安静を強制させられて身体を自由に動かせず,会話も制限されている急性期の患者は,意識が清明であるのに,自分では何一つできない受け身の態度で過ごすことを余儀なくされる.
この場合には,治療・看護スタッフは,今患者がどんな気持ちでいるのか,何を考えているのか,あるいは何を望んでいるのか,などを常に配慮して患者に接する必要がある.もしも,この配慮に欠けるなら,患者は自分の病気や心情を治療スタッフが十分に理解してくれないと不満を抱き,相互の関係が円滑に保てなくなる恐れがある.
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.