社会の階層化を反映した医療と医師の特権

目を見張るクリーブランドの郊外住宅地

　私と私の家族が，初めてアメリカを訪れ，オハイオ州のクリーブランド空港に着いた時，出迎えてくれたのはロング夫妻でした，2人とも若く，まだ20代で，ご主人のブルースは，今年医学部を卒業したばかりの，まだ研修中の内科医です．夫人のスーザンは，新進の医療人類学者で，彼女が日本滞在中，私がその研究を少しばかりお手伝いしたのが機縁で，私がアメリカの医療制度を調査するにあたり，今度は全面的にお世話になったというわけでした．

　空港から彼らの家へ向かう車から眺めたクリーブランド市内の印象は，芳しいものではありませんでした．クリーブランドは，北米5大湖の水運を利用して，早くから開けたアメリカの工業都市の中でも，古顔のほうです．