特集 共働き家庭のための出産準備アップデート
「特権」から考える 家庭内の不平等の解決法
出口 真紀子
1
1上智大学外国語学部英語学科
pp.530-535
発行日 2022年10月25日
Published Date 2022/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665202063
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
無償で家事を「するべき」人々と「しなくていい」人々
日本の家庭では,女性が男性の5.5倍の時間を家事・育児・介護などの無償労働に充てています1)。家事を「自分がやらなければいけない」と思っている男性は少なく,家庭で無償労働にのみ従事する専業主婦のような女性は「働いていない」と見なされがちです。この問題を取り扱ったのが,2016年に放送されて大人気を博したテレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』でした。結婚する前は家事労働に賃金を払っていた男性が,結婚した途端,その家事労働は無償になると思い込んでいた場面があります。そして妻となる女性が「それは愛の搾取です」と指摘するのです。この台詞のように,日本には,「愛情があれば無償で家事をすべき」という前提があり,それが女性を生きづらくしている要因と言えます。
逆に言うと,「(愛情の有無にかかわらず)無償で家事をしなくていい」という「特権」を持っている人たちがいるわけです。それが性差別に基づく「男性特権」です。
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.