らいを超えて・12
らいが心の財産
前浜 政子
1
1長島愛生園
pp.1308-1311
発行日 1979年12月1日
Published Date 1979/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918840
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社会復帰者を訪ねて
確かにらいは過去において恐ろしい疾患であったかもしれないが,現在の常識からすれば恐ろしいことは不可解でしかない。ともかく一般のらいに対するイメージは,その後遺症にあると思われる.このように偏見に満ちた社会に復帰する軽快退所者は,自衛手段として前歴を秘めてしまうことが多い.それがまたらいを恐れる誤解を生むという非難もあるが,現状ではむしろ仕方がないと考えた方が良い.もちろん周囲が以前にらいをわずらったことを知っているならば,治った事実を公言するだけの勇気は欲しい.(高橋俊一郎:らい医学の手引き,克誠堂出版,1968より,傍点筆者).
さて,私が訪ねた社会復帰者の中道氏の場合はどうか──広島駅からタクシーで約30分,中国山脈が一望できる高台の団地のお宅に中道氏御夫妻を訪問したのは,広島市内が夏祭りでにぎわっていた6月の土曜日の午後であった.
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