特集 病名を告げえない状況のなかで
人格的な分かち合いができれば
上田 建
1
1東京衛生病院
pp.1251-1255
発行日 1979年12月1日
Published Date 1979/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918831
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‘死’こそ重症患者の最大関心事
現在日本での年間死亡者数は約70万5000人で,45秒に1人の割合で死んでいることになる.各国の死亡者数は,人口や医療事情によって異なるとしても,世界の総人口約41億から推測すると,1秒に1人の割合で死んでいるとも言える.ふと物思いにふけるその間も,談笑を楽しんでいる時の流れの一刻一刻にも,どこかでだれかが死んでいく.
人間にとって‘死’ほど確かなことはない.だれもが癌に冒されるわけではなく,みんなが脳卒中や心臓病で倒れるのでもない.しかし,死から解放されている人はひとりもいない.死は病原菌による病や事故によるケガとして外から襲いくるものとはかぎらない.心臓が絶え間なく脈打ち,肺が呼吸運動を続けていること自体が,組織の消耗を招き,老化を進めていく.生きることが死への歩みであり,人間は死に向かって生きていくのである.
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