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ニユーロン説—理論と事実
カミロ ゴルヂ
,
萬年 甫
pp.162-175
発行日 1966年3月25日
Published Date 1966/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904277
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私が常日頃ニューロン説に対して公然と反対の立場をとつておるにもかかわりませず—もちろんその説の出発点となつたものがまさしく私の研究からであることは十分承知の上でのことでありますが—この講演の題目に私がその当のニューロンの問題をとりあげましたことは奇異とも思われるかもしれません。そしてこの説があらゆる方面からみて衰微しつつあることがはつきりしている時にこのようなことを行なうということは奇しきこととも申せましよう。
衰微の徴をあらわしているとは申せ,この説はやはりきわめて有力なものであるだけでなく,現在人々の興味の的となつております。なぜなら,生理学者も,解剖学者も,病理学者も,大部分の人々は依然としてこのニューロン説と結びついており,さらに臨床医たちもこの説を信条としてみとめない限りは新しいものからとりのこされてしまうというようにすら考えております。それにニューロンという言葉に当然与えられるべきものとは違う意義が附せられる傾向がはつきりとみえはじめているだけに,このことは,ますますあらたな吟味を行なうに価する課題なのであります。事実,多くのひとびとは言葉の問題を論じ,これまでひろく用いられ伝統ともなつている神経細胞(cellule nerveuse)という言葉をニューロン(neurone)という言葉でおきかえようとしております。
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