救急医療と看護・19
救急診療と看護婦の医療過誤
松倉 豊治
1
1兵庫医科大学法医学
pp.1097-1100
発行日 1978年10月1日
Published Date 1978/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918522
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
医療過誤という観点でみると,救急診療と一般診療との間に,診療上の原則としての変わりはないともいえるし,また大きな違いがあるともいえる.つまりそれは,診療またはその補助という業務の中で医師または看護婦が果たすべき‘業務上の注意義務’あるいは‘患者に対する善良なる管理者としての注意義務’の点では両者の間に何ら基本的な差がないといえる一方,救急診療の場合には,その業務が時間帯にかかわりなく突然に,しかも時によっては事態発生の事情もよく分からない状況の下で開始され,かつそれに対応する診断・治療の措置が急速に行われる必要があるのみならず,最初のわずかな疎漏やあるいは大きな手違いが治療の全体を回復不能の程度にまで誤った方向に導くおそれがあるだけに,平素より十分訓練された,あるいは特殊専門的な措置が看護婦にも求められるし,それに対応する適切な設備の整備・充実が必要とされる,といった特別の診療条件(診療環境)に対応する特別の注意義務が求められる,という点で両者の間に大きな差があるからである.以下こういう観点から,若干を述べてみよう.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.