内科医のためのリスクマネジメント—医事紛争からのフィードバック・9
院内感染と医療過誤
長野 展久
1,2
1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科司法医学
2東京海上メディカルサービス
pp.2168-2172
発行日 2002年12月10日
Published Date 2002/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909206
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院内感染
院内感染とは,病院内の医療行為や患者との接触を介して微生物に感染することであり,「入院後あるいは特定の病棟に転科後48時間以降に起きた感染症」と定義されています.その特徴として,抗菌薬や消毒薬に耐性を示す細菌や真菌など,健康人には感染を惹起しない弱毒性の病原体により,感染抵抗力が減弱した患者に発症する傾向があります.原因微生物としてはMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌),VRE(バンコマイシン耐性腸球菌),緑膿菌,セラチアなどの細菌と,カンジダ,アスペルギルスなどの真菌が問題になることは,もはや医学的常識といってもよいでしょう.多くの施設では院内感染防止対策に熱心に取り組んでいて,感染症対策委員会の開催,感染症対策マニュアル作成などは当然のこととなってきました.さらに厚生労働省は,院内感染防止対策が不備の施設には診療報酬を減算するという行政指導を行っています.
ところが,このような院内感染の知識普及が進んでもなお,院内感染に関連した医事紛争は後を絶ちません.最近も東京都内の有床診療所でセラチアによる院内感染が発生し,24歳から91歳までの入院患者7名が死亡するという事件が報道されました.
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