病める心の人とともに・10
事故を通して学ぶ
羽生 りつ
1
1国立武蔵療養所
pp.1085-1088
発行日 1978年10月1日
Published Date 1978/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918519
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‘鍵はなぜあるのでしょうか’と問われて
なぜ精神病院の出入口には鍵があるのでしょうか,格子と鍵に囲まれて患者さんは行動の自由を制限されています.なぜ,と学生は必ずといってよいほど問いかけます.この問いに対して看護者はどのように答えるのでしょうか.
患者さんの病気の性格上,患者さんによっては病棟を閉鎖せざるを得ないのが精神病院なのです,と答えるでしょうか.そうです,患者さんの中には日常生活がスムーズにいかず,人間関係に破たんをきたし,社会生活を自ら維持することができなくなり病院を訪れる方が多いのです.病的な体験に支配されて,自らもまた他の人に対しても攻撃的になったり,あるいは被害者的に苦慮し自分自身の力で病的状態の苦しみから脱することができなくなる人もいます.このような状態を保護するために,治療・看護を目的とした閉鎖の生活が始まるのです.
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