免疫と病気・9
癌と免疫
矢田 純一
1
1東京医科歯科大学医学部小児科
pp.977-980
発行日 1978年9月1日
Published Date 1978/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918495
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癌を免疫学的に排除するメカニズムが存在することが明らかにされてきている.結核菌や溶連菌ないし担子菌などのある成分は免疫系を刺激し免疫力を増強することが知られているが,そのような免疫強化剤をあらかじめ与えておくと,動物に発癌物質を投与しても癌が発生することが少なくなる.癌細胞をX線照射して不活化したものを投与しておいた後で同一の癌細胞を移植しても,もはや癌の増殖は起こらなくなる.
非常にまれなことではあるが,1度発生した癌がろくに治療も加えられないのに自然に小さくなっていくことがある.これは,おそらく患者の癌に対する免疫能が発揮されたことによって起こった現象であろうと予想されている.実験動物の癌でも自然退縮したもの,癌を結紮し治療させたものに,他の動物に移植して維持していた同一の癌を再びもどしてやっても,もはやその癌は生着できなくなっている,というようなことも観察されている.
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