くすりの毒性・8
ペニシリン—薬物アレルギー
高橋 日出彦
1
1東京医科大学生理学科
pp.863
発行日 1976年8月1日
Published Date 1976/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917955
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後にノーベルブライザーとして医学史上に不朽の名声をとどめることになるが,当時はあまりさえない細菌学者であったフレミングは,実験に使用した細菌培地を捨てないで,いつまでも保存しておくという,多少アブノーマルな習癖の持ち主でした.培地の細菌コロニーが,カビにより消失することを発見した時,その現象に大きな興味を抱いたことが,恐らく彼自身も予想だにしなかったに違いない大発見の道に,彼を押しやったのでした.ペニシリンの発見とその実用化の歴史は,これほど偶然というものが個人の人生と科学の歴史を支配しうるのかということの見本のようなものです.
ところで,このペニシリンという偉大なる偶然は,薬物アレルギーという現象を否応なしに注目させたという意味でも,忘れ難い薬です.
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