寝たきり老人の訪問看護
床ずれ
島田 妙子
1
1東京白十字病院
pp.614-615
発行日 1976年6月1日
Published Date 1976/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917902
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私たち看護婦は‘看護の専門家’のつもりです.専門家のつもりと書くと,頭から湯気をたてて,口から泡をとばして,‘つもりとはなんですか!’とどなる人がいるのではないかと思います.どなられると私は,頭に両手を当てて背中を丸めて,怒りの通り過ぎるのを待って‘すみません’とあやまりたい.本当は,胸を張って‘私は看護の専門家です.私の手にかかれば,どんな人でも快適な生活を,苦しい時のなぐさめになりますよ,私の世話を受けてみませんか,私に世話をさせてください’と言って売り込んでみたいと思っている1人なのです.
長い間,寝たきりでいる患者に出会った時’まず気をつけて観察する項目の1つに‘床ずれ’があります.床ずれ,床擦れ,褥瘡,褥創などとも書く.地方によっては別の呼び名もあるだろう.土地っ子の開業医先生と一緒に老人を訪問したとき,先生は家族に‘その後“ねごし”はどうですか’と尋ねておられた.床ずれ,褥創,ねごしなどという言葉の響きからも,動けなくて寝たきりの人に発症しやすい副産物なのでしょう.床ずれが副産物とすると,主産物の寝たきりになった疾病や身体状況があります.この主産物を改善しようと治療を受けることになります.この治療を担当するのは,医師の分野でしょう.そして,寝たきりであることから発症しやすい副産物(床ずれ)をつくらないように世話をするのが看護の分野であろうと思います.
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