特集 死と向かい合う‘いのち’
筋ジストロフィー患者とのかかわりのなかから
小宮 勇
1
1旭保健所
pp.1103-1107
発行日 1975年11月1日
Published Date 1975/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917369
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
家庭訪問を始めたいきさつ
保健所の中で,様々なルートから,様々な患者に出会う.保健婦がどんな対象に,どう働き掛けるのがいいかは,いつも問われていることであり,ここでくわしく言及する紙数がないが,私が筋ジストロフィー症(PMD症と略す)患者を訪問対象にしたのは,学校卒業後10年ぶりに現場活動を始めた昭和48年8月,東京都神経科学総合研究所を中心に始められた,在宅看護研究会(以下,在看研と略す.この会の難病患者に対し,保健医療従事者は何をしなければならないか,何ができるかを事例を通じて考えていく,事例にはチームでアプローチしていく,そして絶えずグループの中で討議していくという方向が,仕事を始めたばかりの私には必要なことと思えた)に所属したことがキッカケである.多くの難病の中から最初にPMD症を選んだのは,患者会が活発に活動しており,私たちの意図と会の意図が容易に了解し得たからである.
患者会を通じて4名のPMD症患者を紹介され,初回訪問までには,会長から趣旨説明がなされ,保健婦の紹介がされていたにもかかわらず,私の気持ちは非常に高ぶっていた.これは,今まで‘筋ジストロフィーは大変な疾患’としてテレビや書物で目にしていた時と異なり‘実際に患者とのかかわりが始まるんだ.始まったら,後に引けないんだ’という気負いからだったのかも知れない.
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.