ベッドサイドの看護
家族から同居生活を拒否された精神分裂病患者の社会復帰への援助
荒井 政八
1
,
石川 裕美
1
,
工藤 澄子
1
1都立世田谷リハビリテーションセンター看護係
pp.436-438
発行日 1974年4月1日
Published Date 1974/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916990
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Ⅰ.はじめに
10年前まで,精神科看護は,入院時の興奮や昏迷状態の看護から社会復帰の援助に至るまでの,広い範囲を受け持っていたが,最近は,臨床心理員(CP)・作業療法士(OT)・精神科ソーシャルワーカー(PSW)など,いろいろな職種が採用され,精神科における医療水準は高まっている.しかし,恵まれた病院ほど,看護者が他の職種に依存し過ぎて,精神科看護の受け持つ範囲を,自ら限定し過ぎるきらいがあるように思われてならない.
私たちは精神病院を退院したものの,同居中の家族と折り合わず,ほとんど口をきくこともなく自室にひきこもり,働く気も失ってしまった精神分裂病患者に対して,病室場面の看護にとどまらず,ホステル(宿泊施設)での生活指導から就労援助まで,広範囲の働きかけを試みた.患者はまだ住込就職後半年しかたっておらず,勤め続けることができるかどうか見守っている段階だが,いわば退嬰的なベッドサイドの看護への反省として,私たちの経験を報告してみたい.なお,本例は特別なケースではなく,当センター退所後家族のもとに帰る見込みのある人は,宿泊部門利用者46名中19名しかいないのである.
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