連載 医学と文明・10
男と女
水野 肇
pp.1354-1358
発行日 1973年10月1日
Published Date 1973/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916791
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
生物としての男性と女性
ひところ‘家庭論’というのがはやった.百家争鳴の感があったが,そこからはあまり新しい考え方は生まれてこなかったようである.‘核家族’といわれ,父親像のない家庭がふえたといわれ,そして近ごろでは,きわめて物騒な表現だが‘子殺しの時代’とさえいわれている.私たちはゆれ動く社会の激流に,ただほんろうされ,その場限りの考え方とムードに押し流され,まるで羅針盤も海図もなしに,大海をただよっているかの感じさえもたされている.
社会学や経済学からみた家庭のあり方や男と女の関係は,数多くの意見が開陳されている.しかし,意外に少ないのは,医学や生物学からみた男と女の問題である.生物としての人間という角度からの見方は,一応の基本となるべきものだと私は思うのだが,そちら側からの指摘がないのは,あまりにもわかり切っていると考える人が多いためか,それとも案外むずかしい問題なのかのどちらかであろう.そこで,いうなれば‘人間生物学’といったような角度から,この男性と女性の相違を考えてみるの無意味ではないように思う.
Copyright © 1973, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.