連載 死と看護・10
死の看護の実際(3)—心のドアを開く看護
河野 博臣
1
1河野胃腸科・外科医院
pp.1346-1353
発行日 1973年10月1日
Published Date 1973/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916790
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死は確実にやってくる
‘死と看護’について書きはじめてからだいぶ時が過ぎました.この原稿を書いている間にも,多くの人々が死んでいったし,また現在も死の中にいる人に接しています.私は私なりに今まで‘死にゆく人’に対して看護をしてきましたが,やはり死のベッドにある人に接することはたいへんなことであり,ひとりひとり関係ができ上がるたびに新しい恐れと,患者が平安であってほしいと思う期待は違ってきます.
ある患者はほんとうに平安に死んでいった.家族も十分に悲しみ,立ち上がっていってくれる確信をもつような医療と看護と,死後の患者の家族に対する配慮もうまくいったように思ったのに,次の新しい患者に対しては,新しい不安と恐怖,またそれに対するどうしようもないような怒りもわき上がってきます.‘死’に対して現代医学は無力だという実感をもち,うちひしがれた毎日が続きます.
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