視点
歴史を紡ぐ男と女
潮谷 義子
1
1熊本県庁
pp.562-563
発行日 2001年8月15日
Published Date 2001/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902966
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考えすぎ?
ちょっと面白い発見をした.それは,「思いやり」という言葉に関してのことである.夫は日本語と英語両方のニューズウィーク誌を購読していて,私はもっぱら日本語版をナナメ読みするのが常である.ブッシュ氏が大統領に就任した時の演説に「弱者に思いやりを」というフレーズがあった.一方,女性フェニミズムにかかわったアメリカの女性たちによる「希望する社会とは思いやりが生かせる社会の実現に女性が貢献できること」というフレーズがあった.たまたま同時に目にしたこの二つの「思いやり」という文言に魅かれて英字をたどってみた.ブッシュ氏のほうは,compassion,後者の表現はcareとなっていた.そこには共通して「他を思う」という意味合いがあるものの,行動を伴うか否かの違いを感じ取ることができる.少し理屈っぽいが,同情や憐れみのニュアンスの思いやりよりも,実際に行為を通して他を省み,自分の能力を用いる生き方に女性が充実感を抱く姿に共感を抱いた.また,この使い方に「性差」を覚える,と思うのは考え過ぎだろうか.はたまた,アメリカにも旧来からの社会制度・慣行・ライフスタイルなどの影響が言語にもジェンダー形成をしている由縁だろうか.
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