映画コーナー
転落した女の生きるということ—『男と女のいる舖道』(仏)
志摩 夏人
pp.40
発行日 1964年1月1日
Published Date 1964/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202680
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「勝手にしやがれ」で映画の文法を書き改めてしまったゴダール監督の最新作.自分の美学以外では,決してものを見たり,話したりしないヌーベル・バークの生き残りが,自らの思想を,もののみごとに映像に定着してみせた独創的な宣言だ.僕は,その設計図のような綿密さと残酷なまでの現実凝視に圧倒され,フラフラになった.ゴダールは,ひとりの女の薄幸の生涯を目の前につきつける.
ナナ(アンナ・カリーナ)はレコード店に勤める平凡な女だ.結婚もしていないのに,子どもを生んでいる.そんな女が,たった2000フランの下宿代が払えないために,のら猫のように追い出され,まちの女に転落する.一度身を持ちくずした女は,売春組織のワナの中で,がんじがらめになり,自分の意志では,何一つ行なうことはできなくなる.ある日ナナは再び男を愛しはじめた.一つの品物から人間に復帰しようと決意したナナだったが,組織はナナを売買しようとし,話のこじれから,ナナは撃たれて舗道に倒れる.
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