ちょっとサイエンス
男と女はボーダーレス
牧 智子
pp.434
発行日 1994年5月25日
Published Date 1994/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901026
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脳の性差
1年ほど前の読売新聞でおもしろい記事を見つけました。脳についての連載で,とくに脳の性差について書かれた回で,こんな例が紹介されていました。「男性ホルモンを過剰に分泌する先天性副腎皮質過形成症の女の子はおてんばで男の子の遊びを好む。サルの実験でも妊娠中の母親に男性ホルモンを投与すると,生まれた雌の子ザルは雄の子ザルのように活発に遊ぶ」
同記事中の順天堂大学第二解剖学教室の新井康允教授の説明によると,身体上の男女の区別は妊娠8週以降にみられ,男の胎児の場合は16〜20数週に成人男性の濃度に匹敵する大量の男性ホルモンを精巣から分泌するのだそうです。そのとき脳が男性ホルモンにさらされ,神経細胞が作用を受けて脳の性分化が起こると考えられているのだそうです。つまり,神経回路はもともと女性型で,男性ホルモンの働きで男性型の同路に生まれ変わるというわけです。男性の同性愛者は胎児期の男性ホルモンの分泌が少なかったのではないかと,新井教授は指摘しています。
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