病気のミニ世界史
梅毒
大熊 房太郎
pp.36
発行日 1970年6月1日
Published Date 1970/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914907
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土肥慶蔵博士(明治31年から大正15年まで東大教授)の世界的に有名な著作『世界黴毒史』によりますと,梅毒は1492年にコロンブスが西インド諸島に到達してアメリカを発見したさいにヨーロッパにもたらされ,まずスペイン,フランス,イタリアにひろがって,数年のうちにヨーロッパ全土に蔓延した……といわれています。
この伝染病がインド,東南アジア,中国などを経由して,はじめてわが国に侵入したのは室町時代の後期—永正9年(1512年)で,記録によりますと,最初は京都や堺などを中心に関西地方で流行し,翌年には関東地方にも伝わりました。つまり,コロンブスの一行が病原体をスペインに持ち帰ってからわずか20年で日本まで到達したわけで,そのころの交通事情から考えたら,これは驚くべきスピードといえるでしょう。
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