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女性12章—虚実
横山 正次
pp.109-111
発行日 1969年12月1日
Published Date 1969/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914722
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たとえば新婚の夫婦が、都内にちょっと真新しい、1DKほどのアパートを借りるとする。すると契約書の片隅に「契約期間中は子どもをつくらない」と—札入るのが普通であろう。これが現実である。結婚とは本来、好いた男女が結ばれて子を育くみ、家庭を営むものである。だが、どこに安心して子を育て、家庭を営む──つまりそのためには少くとも必要にして最少程度の場所と時間と精神的ゆとりがいるのだが──条件が保証されているというのであろう。年々さいさい華やかになるという結婚“式”は、その現実をネガにして逆さまに映し出された、いかにも虚しげなポジにすぎないのだ。
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