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女性12章—変節
横山 正次
pp.113-115
発行日 1969年6月1日
Published Date 1969/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917639
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変節という言葉の概念には,守るべき節義の存在が前提されている。だから,かつて固守すべきひとかけらの節も見出せない大学時代の革命家からマイホームサラリーマンへというステロタイプに変節の形容はおこがましいのである。
貌はひとつの主張である。節義である。女性がこの主張を造り上げる姿は古今東西を問わぬ風俗の普遍的テーマのびとつであつた。そのままでは永遠に主張しえない己れの本体を移ろいゆく時代相に投映しようとして鏡台の前に坐りこむ女性の姿にはその変節の賭けようとするすさまじいばかりの怨念がこめられていはしまいか。支配者の真に恐怖すべきはステロタイプの中のゲバ棒ではなくして,この怨念にこそ他ならない。
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