ドクター訪問
移植術は明日に向かって開いた医学—札幌医科大学教授 和田寿郎先生
本誌編集室
pp.121
発行日 1969年11月1日
Published Date 1969/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914695
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「別に,何とも考えておりません。」—野太い声がひとことかえってきて,しばし沈黙が続いた。医療界の,しかも専門技術的な問題にこれほど一般ジャーナリズムが目を向けることはめずらしい。そして文学や哲学,宗教など他分野からの数多くの発言があった。その事実を専門家としてはどう受けとめておられるか—そのあたりをたずねてみたかったのである。
「恋をしている若い男女が,仲人をたてて結婚をした。それを回りで良いとか悪いとかいって騒いでいる。当事者にとって何の関係もないことです」とややあって,説くようによどみなく言葉が続いた。「医師と看護婦とが,良心と誠意とをもって,現に苦しみ先が見えなくなっている人に対して,生きるという質的な喜びを与えようと奉仕したのです。困っている人がいるのなら,どうぞ役だててほしいという心臓提供者遺族の方の崇高な気持があり,そして,治らぬことはわかっているのだから,もしも日本でやれることならやってほしいという意志とがあった。そして,今もってどこからも,何の文句も出ていないということです。」
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