M.S.W.の目
貧困と無知と病気のなかの母娘の悲劇
中島 さつき
pp.64
発行日 1969年11月1日
Published Date 1969/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914679
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ユキ(30才)は総合病院のMSWによってはじめて診察を受けることができ,薬を飲んで2,3日はてんかんの発作がなくなった。しかしそのうちめまいがして歩けなくなり,4日目,再び吾作(45才)に付き添われて来院した。專門医が診察した結果,妊娠の心配はなく,婦人科治療よりてんかん治療のほうが先で,薬の最を減らし処方するが,これでめまいとか心臓が苦しいというのであれば,てんかん以外の精神的原因によるものと思ってよい,という意見であった。
ユキは薬服用後の観察のため,一晩母の病棟に泊ることになった。母静子(51才)はユキを前にして看護婦や療友に「こんなバケモノみたいなやつ,みなさんがびっくりするでしょう。一人前でないバカ者だから,人にやってもらわないと何もできない」と言う。精神科への付添も「体の具合がわるくて行けそうにない」とMSWに頼みたがった。SWは「お母さんがユキさんのことをそんなふうにいうのは,第三者の目を考えての謙遜でしょうが,それがどんなにユキさんを傷つける言葉かわからない。ユキさんのことを本当に心配しているのはお母さんだけなのだから,その心を素直に言葉に出していたわってあげてください。
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