ちょっとサイエンス(最終回)
人は人について無知だという発見
牧 智子
pp.999
発行日 1994年12月25日
Published Date 1994/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901158
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何でもわかる,コントロールできるという幻想
前回は,「人が男であるか,女であるかの線引きは人の手に負いかねる領域だ」と書きました。私たちはそんなことも判断しかねるほど,人間について無知な存在なのですね。
ところで,私は現在妊娠中で,おなかも目立ってきたので近所の人からよく声をかけられます。「今度の赤ちゃんは男の子?それとも女の子?」と何人もの女性に聞かれました。「そんなこと教えてもらっていない」と言うと,「近所の○○先生は必ず教えてくれるわよ。男女産み分けの相談にも乗ってくれるのよ」という返事が返ってきました。それを聞いていた別の女性は,「性別どころか,臨月が近くなると,お誕日はいつにしますか,なんて聞いてくれるわよ」と言い出しました。別にそれを怖いとか,おかしいとか非難がましく言っているわけではなく,むしろ「優秀なお医者さま」というニュアンスでした。
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