Medical Topics
聴神経腫瘍の診断,他
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pp.86-87
発行日 1968年9月1日
Published Date 1968/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914127
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聴神経腫瘍はすべての脳腫瘍の10%前後を占めるもので,脳外科的に重要な疾患である。しかし,患者の初発症状が,耳鳴・難聴であることから,最初に患者が症状を訴えるのは耳鼻咽喉科である場合が多い。否,大部分の聴神経腫瘍の患者は一応は耳鼻咽喉科を訪ねている。しかし,耳鼻咽喉科においては,オーヂオメトリーによって,感音系の難聴が証明されるとして,感音系難聴と診断・処置されてしまう場合が多い。これは,Cushingがいったごとく,内科医は神経系疾患を誤診することがしばしばあるが,耳鼻科医は神経系疾患を念頭にすらおかない,ということに原因がある。
それで,腫瘍が増大して,種々の症状が顕著になってきて,脳神経科ないしは脳神経外科をおとずれるという結果になり,手術後も後遣症に長く悩むことになる。これは初診時の耳鼻科医の責任であるともいえる。そこで日常の多忙な耳鼻科外来において,聴神経腫瘍を,いかに簡単に鑑別するかということが問題になる。聴神経腫瘍は前庭神経から発生するものであり,当然初発症状は前庭系にくるべきであるが,その障害は徐々であるので代償作用により自覚されないが,検査によりこれを証明することができる。すなわち最も簡単に行なえるのはアルコール眼振検査である。アルコールの気化熱による冷却作用を外側半規管に対する刺激として与えるわけである。手技も簡単で,短時間で可能である。
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