ナースひとり世界を行く・〈最終回〉
—アメリカをあとにして—世界の旅を終える
菅 和子
1
1元東京女子医大病院
pp.96-97
発行日 1968年3月1日
Published Date 1968/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913926
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/黒い肌の悲しみ/
アメリカの南部は黒人が多い。黒人街を通って街へ出る。手伝いの女性は大部分が黒人である。しかし私には思ったほど差別がないように思えた。あまりにも自分をわきまえた態度に,私はあわれさえ感じた。
週3回親類の所へ掃除をしに来る巨体のオバサンに,ポツリポツリと単語をならべるようにして,仕事や家族のことを聞いた。ご主人と二人の息子(18歳と16歳)は兵隊,それに小学生の女の子と男の子がいるという。彼女はクリスチャンで,このような運命は神がさずけられたものだから,重労働も,貧乏も,夫や息子と離れることも,私は何とも思わないと語る。私は神さまも残酷なことをなさるものだと思った。黒い肌にチリチリの髪,開いた鼻こんな人種をさずけるとは,私たち黄色人種や背の小さい者よりも,もっとひどいではないか(この頃では手術やカツラでおやっと思うような黒人たちもいるが……)。彼女のように“私たちはアメリカの土台”と言える心も必要なのか。その人たちを認めてこそ,彼女たちはむくいられるであろうに,そのよりどころは教会だという。根っからのクリスチャンだ。しかし信仰をもてる人は幸せだとつくづく思う。
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