特別レポート 医師とナースによる共同研究
広範な骨転移をきたした細網肉腫例におけるX線治療と看護の経験
芦沢 昭
1
,
牟田 晋一郎
2
,
鍬先 行二
3
,
樋渡 淳三
4
,
野村 雄幸
5
,
古沢 ミスエ
6
,
三根 トシヱ
7
,
田口 理恵子
7
,
大島 静子
7
,
熊谷 千夜子
7
1三菱重工長崎三菱病院放射線科
2三菱重工長崎三菱病院耳鼻咽喉科
3三菱重工長崎三菱病院外科
4三菱重工長崎三菱病院内科
5三菱重工長崎三菱病院歯科
6三菱重工長崎三菱病院
7三菱重工長崎三菱病院西病棟
pp.44-53
発行日 1965年11月1日
Published Date 1965/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913776
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はじめに
近年,コバルト60やベータトロン,さらにはリニア・アクセラレータなど高エネルギー放射線源を利用した癌やその他の悪性新生物に対する放射線治療の普及とその卓越性が叫ばれてきたが,このような装置とこれを十分に駆使できる放射線専門医や看護婦をそなえた病院は,大学病院や癌センターなどの大病院に限られている。これに反しわれわれの病院においては,たかだか,200kVp,6mA位のX線治療機で,残酷な皮膚障害をみすみす与えつつ,十分な病巣線量を加ええないままに放射線治療とは名ばかりの,X線治療を行なっている現況である。しかしこれがまだ全国過半数の病院における放射線治療の実態であって,X線治療の対象が,子宮癌や乳癌の術後照射や皮膚疾患を主体とした表在治療にしぼられ,放射線の治療効果が手術に優先することを見せつけられるような症例にめぐりあう機会の少ない理由にもなっているようである。原疾患がいかに悪性で,直接生命と結びつくものであり,放射線治療による延命効果が期待されえても,皮膚障害を重要視する診断医の放射線治療への消極的態度のみに責任を負わす訳にはゆかず,優秀なる装置の完備と放射線医学の啓蒙さらには一般への再教育が問題として残されよう。
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