患者とともに
J氏の行動をめぐって(その1)
小林 富美栄
1
1東京女子医大付属高等看護学校
pp.54-55
発行日 1965年9月1日
Published Date 1965/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913718
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りゅうびをさかだてたアメリカ看護婦
ある朝のこと,ひきつぎがはじまる一刻前,夜勤看護婦のまわりに座りスタッフは,異常に興奮しているようであった。話の様子では304号室の患者J氏が何か特別の行動をしたということで,それに対してワイワイと意見がとび交っている状態である。「要するに,若い人が受けもたないように主任に進言するのがいいと思う」とチームリーダーのM看護婦がのべた意見に同意したところで,主任が現われて朝のひきつぎがはじまった。私がそれまでにきいたことは,その朝,夜勤看護婦がJ氏のところに検温に行って,ベットの傍に立ったら,右腕をかかえこまれたというできごとであった。夜勤者は40歳すぎの実務看護婦で決して若々しい年齢でもないが予期せぬことであったので,まだ胸のドキドキするのがおさまらないという身振りで報告をしていた。その場で長々とデイスカッションを続けることもできないので,一同はそういう癖のある患者と心得て,なるべく警戒する方がよいという結論になった。私は自分のティームの担当でない患者であったので,それまでJ氏の情報は何にも得ていなかった。
それから2日間は何事もおこらずにすんでいたようであったが,3日目に,実務看護婦生徒のS夫人がスポンヂバスを行なっている時に,腕を大きくつまみ上げられ「若い人の身体は筋肉が張り切っていて気持がいいね」といわれたできごとがあった。
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