ポイント
考えぬ葦
二木 シズヱ
1
1一宮市市立市民病院看護部
pp.101
発行日 1965年4月1日
Published Date 1965/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913569
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静かな正月を病院でむかえ,身体の自由が保証されたのち,手術後の休養をとるために,私は久しぶりに大阪に住む母のもとにかえった。賑やかな温かい家庭ととも小さい時から喰べなれたなつかしい母の味つけに舌づつみをうちながら,失なわれていた人間生活をとりもどした。小さい子供から老人にいたるまで,幅広い年令層をもつ私の家庭は一年に数回の集会ではあるが,よくしゃべりよく議論し,よく笑う。そんな雰囲気の中にひたりながら,私は寮生活のわびしさをいまさらの如くおもう。
10日間大阪に留まっているうちに,病院に働いている看護婦さんたちと話しあう機会があった。偶然ではあるが,ちがった病院の2人の婦長さんから「女の人が,独身でながく働いていると,ヒステリーになって,共に仕事をするのがむつかしい。やはり結婚しない人はヒステリーになる傾向がつよいのでしょうか」という質問をいただいた。同じような意見を私はたびたび聞かされたが,質問されたのはこれが始めてである。もちろん質問者は既婚者で,回答者は未婚者である。
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