看護婦さんへの手紙
機敏な動作のなかの技術
小島 信夫
pp.13
発行日 1965年3月1日
Published Date 1965/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913519
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一昨年病妻を新宿の某病院へ入院させていた頃の思い出がいろいろあります。患者や家族の気持はおなじことでしょうから,ありふれたことしか書けないかもわかりませんが申しあげて見ます。
その病院へ再度の入院をさせていただくための診察をうけようとして,妻が待合室で待っていたときのことです。さて名前を呼ばれても立上ることができませんでした。私が何とかして身体を持上げてと思っていると,さっき呼出した看護婦さんが,ふりかえってこの状況に気がつくや,『待って下さい,待って下さい。私がお連れします。ちよっと』といって駈けつけてきました。『これにはコツがあるんですよ。私がしますから』とこういうと,妻の腰のところに手を廻わし,実にうまく持ちあげ『いいでしょ』と妻に声をかけ,『さあ私について,もたれかかるようにして』と声をかけて動き出しました。
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