コール・ランプ
無理が通れば……
批尼苦理狐
pp.94
発行日 1967年4月1日
Published Date 1967/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913123
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前にWさんは大変権威にお弱いといったが,また御自分の権威をも常に周囲に誇示していたいという稚気愛すべきところもあるのである。
ある日,病棟勤務室へ来てWさんがいうには,「Kさん,患者がここへ来た時,あなたがそのテーブルの前に坐り,僕がこっちのテーブルを使うということは,おかしいと思いませんか?」。これは勤務室の一隅にある病棟主任用のテーブルをKさんが使い,自分が来てもその席をゆずってくれないことが常々不満なのだ。ましてや患者と話し合う時など,看護婦がカルテ整理用に坐るテーブルのそばでは,医長という名の沽券にかかわるとでも思っているらしい。しかしKさんにしてみれば肩がきなどクソクラエで,どこに坐ろうと医長は医長,自分は自分の信念で,便宜上,今の机を使っているにすぎないのだから,相手にするのもばからしく,軽く「そうですね」くらいであしらっていた。
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