看護□話し方
報告とコトバ
千名 裕
1
1言論科学研究所
pp.72
発行日 1967年3月1日
Published Date 1967/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913080
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基本的な言語活動
人間の生きる努力というのは,そのおかれた状況においてアム=ベステン(最善)といわれる道を見出し,それをつらぬくことにあるといえないでしょうか。そのためには,自分がどのような状況におかれているかについての,より豊かな認識が大切でしょう。わたくしたちが,どうあるべきかを考えたり,どうすべきかを決定したりするには,より深い,より広い知識を必要とするものです。さまざまな情報や知識を交換するための報告は,その意味でもっとも基本的な言語活動といえるのではないでしょうか。
わたくしたちは自分の身のまわりのできごとをすべて自分の目や耳でとらえることはできません。ある患者の容態が急変したというような場合でも,同室の患者からの知らせをえてそれを知り,処置におもむく場合がたくさんあるはずです。また,自分がこれでいいと思ってやっていることが,他人の眼にどう映っているかも,第三者からの報告ではじめて知りうるし,自分の行動をそれにもとずいて反省し調整することも可能なのでしょう。とくに看護にたずさわるものとしては.実質的に,肉体的にも精神的にも患者に効果があらわれることが大切なので,自分はこれでいいと思ってやっていることが,患者にとって実際はたまらないことであったというのでは意味がありません。
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