連載 路上の人々・9
孤独,溢れ出すコトバ
宮下 忠子
pp.817
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101910
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「ご覧の通りで,食欲ものうてぇ,歩くと足が痛むので一か所でじっとしていたら,こんなに汚れてしまって.見てください.焚き火の煤がこんなに染み込んで.話す元気ないです.えっ体を洗ってくれるのですか? こんなに汚れているのに? こんな親切,初めてだ.
シャワーの湯が黒くなって流れる,アーアーいい気持ちだ.この6年間,仕事ができなくなって,炊き出しや残飯しか食っていないので,皮膚がべろべろで.足も腹も腫れて,栄養失調ですかね.あー,ええーっ,もうお湯は十分です,さっぱりした.本当に有難いです.はい,ここにあるのを着ればいいのですかね.何か月も体を洗ったことがなかったので,ああ,生まれ変わったみたいです.済まないことで.
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