世界の女性
ジェイン・オースチン—平凡にして非凡な女流作家
大野 昌彦
1
1和洋女子大付属国府台女子高校
pp.128-129
発行日 1967年1月1日
Published Date 1967/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913017
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■長い長いまえがき■
たまたま手にした文庫本が,夜汽車のつれづれをなぐさめてくれたばかりか,ひさびさに小説読みの快楽を満喫させてくれました。それが,ジェイン・オースチンの「高慢と偏見」でした。夜汽車の退屈が,そして手もとにいやすものがそれしか見あたらぬ,こういう特殊事情にめぐまれなければ,あるいは読まずにやりすごしてしまったかもしれません。イギリス文学作品だし,題名がいかにも説教めいてかたいからです。その上,これが女人の作であることも手伝って,わたしから遠ざけていたのでしょう。
イギリス文学はどうもいただけない,どこか古めかしく固苦しくていけない。第一に楽しくない。文学はなにより面白くなくちゃいかん。面白いといわれているモームにしたところが平凡で俗気にみちて再読にたえないじゃないか。女人の作ときたらどれもこれも肉眼にこだわる綴り方を一歩も出やしない。女人の作だというものめずらしさを差し引いたらなにがいったい残るというのだ。
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