看護キャンパス
手をさしのべる小羊たち
日比野 路子
1
1華頂短大
pp.86-87
発行日 1966年10月1日
Published Date 1966/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912909
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たった一つの働きかけから
いつも菊の花が咲きかおるころになると想い出すことがある。終戦直後,私は経堂にある,恵泉というミッションスクールに保健衛生の教師として奉職していた。
ある日,私はこのおとなしい羊の群のような女生徒たちに,「敗戦の今,一番不幸な人たちはだれだろうか?」と聞いた。彼女らは口ぐちに,夫を戦死させて子どもをかかえている未亡人だとか,戦争孤児たちだとか,いろいろな意見を出したが,そのなかで,祖国のために傷っき療養生活を過ごしている人たちだといった者があつた。そして,その意見に同調する者が多かったので,もしもあなたたちがそう思うならば,この小田急沿線の相模原に陸軍の療養所があるから,現状はどうなのか調べましょう。そして本当に気の毒な状態にあったら,みんなで慰問に行きませんかと誘ってみた。みんなは目を輝かしてぜひ慰問したいといった。
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