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円形病棟の得失—使用した病院の立場から—附円形看護婦宿舎
林 秀雄
1
1八尾市立病院
pp.283-290
発行日 1958年4月1日
Published Date 1958/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201347
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まえがき
私共の八尾市立病院が武蔵野日赤病院の伝染病棟に次いで,同じく円形の伝染病棟を建築している頃,設計者坂本鹿名夫氏の「円形病院の得失」という論文が本誌15巻1号に発表された。半年おいて昨年の1月本誌16巻1号に伊藤誠氏他の「円形病院の得失について」という論文が掲載された。両者の論文を拝読して見ると,率直に申して,坂本氏は"得"の方を,伊藤氏等は"失"の方を強調されたのではないかという気もするし,ある処では同一の条件を一方は得とし,他方は失としている感がある。
処で,当院の伝染病棟が業務を開始したのは昨年3月1日だが,時あたかも八尾市内に集団赤痢が発生しつつあり,3月21日には178名(内真性赤痢26名,保菌者152名)に達した。かかる非常事態だつたので,関係当局と打合せた上,その半数以上を定員を超えて円形病棟に収容することになつた。一番収容数の多かつた3月21日の状況は赤痢患者25名,同保菌者72名,ジフテリヤ7名,猩紅熱3名,流行性脳脊髄膜炎1名の計108名であつた。残りの保菌者は旧伝染病院に収容した。業務開始と同時にこの仕末になつたので,人員の不足,施設に対する不慣れ等から相当な混乱を来したが,一方では円形病棟の誠に貴重な使用経験を得たわけである。
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