特集 小児病院と看護
国立こども病院の構想—その看護の問題点
桑田 起与
1
1国立こども病院
pp.20-23
発行日 1964年8月1日
Published Date 1964/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912321
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わが国では現在までのところ,小児科(小児内科)の専門病院はあっても,小児のみの総合病院はありません。ところが,欧米諸国では,すでに100年も前から小児専門病院が創設され,現今では多数の小児病院がもたれて,子供が各科の病気にかかって入院する場合には,一般病院にゆくかわりに,小児病院にゆくことが常識になってきております。したがって,そういう地域では,一般の総合病院には小児科が設けられていないということです。
小児は成人とちがい,肉体的にも精神的にも発育の過程にあります。診療に当たっては,病気そのものの診断,療治とともに,保育と看護が併行してゆかなければ,患児の診療も適切には行なえません。わが国でも精神薄弱児の場合には,早くから薄弱児の専門施設が先にできて,その治療,教育,生活指導に当たってきており,また養護者のない孤児のための養育施設,あるいは養護施設は,昔からそれぞれ別に設置されて来ております。また乳児のための乳児院などもできております。それなのに,病気の子供を収容する専門病院がないばかりか,まだ多くの病院では,おとなの医療の片隅で小児の特殊な生活を無視されていることは,まことに不合理です。以上のような理由から,わが国の小児科学会を中心として,小児専門病院の設立を要望する声が,数年前からつよまっておりました。
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