特集 ナースと賃金
看護婦の賃金—看護婦の現状と社会的背景
吉田 秀夫
1,2
1法政大学
2日本福祉大学
pp.10-20
発行日 1964年2月1日
Published Date 1964/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912136
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はじめに
わが国の病院や診療所にはたらいている看護婦が,低廉すぎる賃金と劣悪な労働条件のもとで日夜その仕事に従事しているということは,もはやおおいかくすこともできない周知の事実である。このことは直接医療にたずさわっている人びとも,また医療制度や社会保障に関心のある人びと,かかわりのある人びとのあいだにおいても動かしえない現実として常識化されている。さらにここ数年来きわだって目につくことは,看護婦の圧倒的な不足ということである。現にいま働いている若い看護婦にしても,大都市では《渡り鳥》と名前がついているほど,移動がはげしく,かつやめていく人びとがあとをたたない。公私の看護婦養成所でも定員をみたすということはごくまれで,志望者が激減している。看護婦になり手がないのである。
そのため公私の医療機関は,入院患者でも,また目々の外来患者のばあいでも,安んじて医療サービス,看護サービスをうけるという環境ではなくなってしまった。年ごとに医療が崩れていくような状態にある。わが国の医療制度,医療保障制度,ひいては社会保障制度が,どこかにどうにもならないゆがみ,不合理欠陥があるのではないかということを心ある人びとは漠然と意識するようになってから,数年はたつ。マスコミでさえ,35年春から1年有余にわたる,全国的な病院ストライキが続発したとき,「日本の医療制度はおかしい。政府の医療政策の破たんの現われである。
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