看護婦さんへの手紙
腰が重い
堀 秀彦
1
1東洋大学
pp.5
発行日 1964年2月1日
Published Date 1964/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912133
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どうも世の中には二種類の女性,—というよりは人間がいるようだ。ひとつは腰の重い女性,もうひとつはその反対に,言われたことを気軽にすぐやってくれる女性。そしていうまでもなく,気持のいいのは,あとのほうの女性だ。だが,「私自身はどうなのだろう」ここまでかいて来てフッとそんなことも考えたのだが,どうやら私自身は腰の重いときとそうでないときと,チャンポンになっているような気がする。やっぱり,人間というものは,気持のいいときは,すぐ立って何でもする気になるのだろう。
ところで,腰が重いという生活態度は,人がいいとか悪いとか,反応がにぶいとか早いとか,そういうこととは別のものらしい。私が娘にちょっとしたことを頼んだ場合,すぐしてくれることもあるししばらくまをおいてからしてくれることもある。この,しばらくまをおいてたのんだことをしてくれる態度のことを,腰が重いと言っているわけだが,あらためて考えてみるまでもなく,「腰が重い」という態度は,第一,たいへん損な態度だ。どうせ,してくれるのであったら,3分や5分,それをのばさなくたってよかりそうなものだ。なにかをたのまれあるいは命令されて,3分や5分,その実行をのばしてみることに,どれだけの意味があろうか。たのまれて,待っていましたとばかり,すぐ立ち上がったのでは,いかにもやすっぽい,とでも考えるのであろうか。
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