特集 人間関係
人間関係を看護にいかす
いたわりと責任ある態度を求めている—小児重症患者の親にたいして
常葉 恵子
1
1聖路加国際病院小児病棟
pp.29-31
発行日 1962年9月15日
Published Date 1962/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911722
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子供の病状が悪化してきた時の親の感情は,他の人びとが考えるよりはるかに興奮し,たかぶっているものです。普通の時には,何ら刺激にならないような小さなことが,大きく感情を害することがあります。特に母親の気持はしばしば理性を欠き,あんなに良識のあった人だったのにと思うことば,態度をすることがあります。母親は,こどもの苦しみ,痛みを想像し,自分の身におきかえて考え,その苦しみを何倍かに身に感じ,こどもをいたわります。実際には子供自身はそれほどの苦痛がなくても,こどもの代弁者として訴えるおとなの訴えは,表現が大きくはげしいものとなるのです。また親のその不安の状態は,不思議にも,そのままこどもに移り,こどももまた何か不安定な状態に引きこまれてしまうのです。重症になった患児を取り扱う時は,病児に対する医学的な細かい看護をしなければならないのと同時に,親の取り扱い,親への思いやりが看護婦の大きな責任となってくるのです。
重症な病児をかかえた親の気持は,その状態がどんな経過で現在のようになったかによって,ずいぶん違っております。急激に発病し,どんどん病状が悪化してきた場合,または慢性疾患で,しだいに病状が悪化してきたもの,あるいは,悪性腫瘍のやうに現在の医学では不治の病と診断されてきた親の気持など,それぞれ違ったものを持っております。
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