特集 夏の衛生 夏季に起こりやすい疾病とその予防
耳鼻咽喉科について
小川 常二
1
1国立東京第一病院・耳鼻科
pp.34-36
発行日 1961年8月15日
Published Date 1961/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911449
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1.耳科疾患
外耳炎
耳鼻咽喉科領域において,夏期に起こりやすい疾患として最も多いものは,なんといつても外耳炎であろう。これは夏季高温多湿で汗をかきやすいので皮膚疾患が多くなるが,その部分的疾患として外耳炎と,一方には子供は夏期水泳をするのでとくに外耳炎が多くなり,外来患者の2〜3割は外耳炎患者であるほど多い。海水浴後は淡水で泳いだ以上に外耳炎が多いという統計もある。症状的特徴としては耳介を引つ張つたり圧したりすると強い疼痛を感じることであり,ときには耳漏も出る。中耳炎では決して耳介部を引つ張つたり圧したりしても疼痛はない。これは圧力が中耳迄は及ぼないからである。以上のようにして痛みを覚えるときは外耳炎と考えてよい。外耳炎には2種類あり,瀰漫性外耳炎いわゆる外耳の湿疹と,限局性外耳炎,すなわち耳節の2型がある。
瀰漫性外耳炎(外耳湿疹):顔面湿疹の一部としてよく乳児などに見られるが,また単独にも水泳後などに起こる。処置は外耳道を清拭して軟膏塗布,スルファミン剤,抗生物質の投与で治癒するものであるが,ときには慢性で治りにくい場合は副腎皮質ホルモンやX線照射が著効を奏することがある。
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