詩の話・14
表現のたのしさ
山田 岩三郎
pp.73-75
発行日 1961年1月15日
Published Date 1961/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911248
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原始の世界にあつて人間は,喜びや驚きに声を発し,手足をおどらせて自分の感情をあらわした。次第に人智が発達してくると,ことばが発生し,声が単なる声でなく,ことばという表象を意味して発せられ,手足を躍動させる動作にも表象の意味をもたせるようになる。こうして歌うということを知り,踊るということを覚えてゆく。ここにはつねに律動が必要となる。木の空洞をたたいたり,手もとの石と石とを叩き合せたりして,音のもつおもしろさを知るようにもなつてゆくのです。
さらに原始社会がつくられるようになると,喜びや驚きのあらわれが,集団全体の共通のかたちでなされる。そうした時,円を組んで,歌い踊ることになる。世界いずれの国,どの民族にもこれは見られる。今日のスクエア・ダンスでも,盆踊りでも,みなそれらの継承のかたちであることは申すまでもない。
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