ナースの作文
ある異常者,他
勝原 美代子
pp.48-52
発行日 1960年7月15日
Published Date 1960/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911131
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3月とはいうものの夜間はすこぶる冷えこむ。しかしこの記録室はストーブが独得なリズムを発し,適当な温度でこの寒さを忘れさせる。
第1日目の深夜勤務である。この3日間に急変な異常がないようにと祈りたい気持になる。時たま激しい咳嗽が聞えていたが,今は犬の遠ぼえが無気味に深夜に響き渡つている。夜間は2個病棟の掛持。そして私以外にだれもいないことが心細く,気が重い。それぞれに血痰喀出者,熱発者,呼吸困難者がいるので,些細な音にも敏感に神経に響くのも無理ないというよりも当然のことであろう。
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